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2025年08月の記事は以下のとおりです。

グランドセイコー ヘリテージコレクション SBGH359が新登場。

  • 2025/08/05 11:28

グランドセイコーの阪急うめだ本店限定モデルは、関西の人々にとっては馴染み深いある色を纏って登場した。ダイヤルを見て、ピンと来た人はいるだろうか?

これまでにもユニークなグレーストライプダイヤルのスプリングドライブや、オリジナルのストラップを付属したスペシャルパッケージを発表してきた、グランドセイコーの阪急うめだ本店限定モデル。2024年末に登場したこちらの1本は、“阪急マルーン”と称される阪急電車をイメージしたカラーダイヤルを特徴とした最新作である。(関西の人々には今更説明の必要もないだろうが)阪急電車は関西地方を代表する鉄道会社のひとつであり、大阪・梅田を中心に神戸、大阪、京都の各都市を結ぶ歴史の古い私鉄だ。その始まりは1910年にまでさかのぼり、開業当初から紫がかった赤茶色、すなわちマルーンを車体の表面に使用していた。本作では関西において馴染み深いこのカラーをダイヤルに大胆に使用し、そこにGSロゴ、秒針インデックスのカラーでゴールドを挿すことで文字盤の美しさをいっそう際立たせている。

直径40mm、厚さ12.9mmのステンレススティール(SS)製のケースは、1967年に発売されたグランドセイコー初の自動巻き時計“62GS”のフォルムを現代的に再解釈したデザインになっている。グランドセイコーお得意のザラツ研磨によりラグの先端までエッジが立った多面的な造形を実現しており、光を受けることでメリハリのある美しい輝きを放つ。また、ベゼルレスなデザインのためダイヤルが広々と見える構造となっている点にも注目したい。実際に手に取ると、直径40mmという数字以上にダイヤルの存在を強く感じるはずだ。

内部には自動巻きのCal.9S85を搭載。これは精度の要となるパーツを素材から見直し、2009年当時にグランドセイコーのラインナップでは約40年ぶりとなる自動巻き10振動ハイビートムーブメントとして発表されたものだ。製造はグランドセイコー スタジオ 雫石。3万6000振動/時で駆動して安定した精度を実現している半面、半導体製造に用いられる技術であるMEMS(メムス)によってミクロン単位で部品を再設計し、ガンギ車の前に“ガンギ中間車”を挟むことでハイビートの欠点である輪列にかかる負荷を分散させている。パワーリザーブも日常生活を送るうえで十分実用的な約55時間を確保。ケースバックはシースルーとなっていて、ムーブメントに施された精緻な仕上げやローターに彫られた“Grand Seiko”のロゴ、そしてクリスタルにあしらわれた“獅子”のエンブレムを楽しむことができる。堂々とした“LIMITED EDITION”も文字が印象的だ。

メンズウォッチにおいて一般的なサイズ、実用的なパワーリザーブ、安心の日常生活防水(10気圧)と、トータルでデイリーユースにも適したパッケージだ。価格は92万4000円(税込)で、40本限定での販売となっている。なお、本作はモデル名にもあるとおり阪急うめだ本店でのみの取り扱いとなる。

この時計について執筆するにあたり阪急電車について色々と調べてみたのだが、探れば探るほど本作SBGH359と阪急電車との深い結びつきを実感することになった。同系色のダイヤルを持つモデルでいうと、“暮秋の美”をダイヤルで表現したエレガンスコレクションのSBGW287などが思い浮かぶ。しかし本作では、印象的なざらつきのある仕上げを施したり、その他のパターンをダイヤルに使用したりしているわけではない。上品な光沢のある、フラットなダイヤルを採用している。

阪急電車は数年ごとの車両の再塗装の際、不良箇所にそのまま上塗りするのではなく、塗料を一旦剥がしたうえでパテで平滑化したのちに下塗り、本塗りを重ねるという手間を行なっているのだという。下地の塗装から凹凸をなくすことがあの美しい光沢を生み出す秘訣であり、SBGH359のダイヤルはまさに塗装したての阪急電車の車体を思わせるものとなっている。

また、阪急マルーンのダイヤルはほかのレッドモデルと比べてややトーンが暗く、色味自体の主張は控えめだ。実際に時計を手に取って撮影してみると、ダイヤルのマルーンは広告画像ほど赤みは強くなく、より落ち着いて見えた。この日着ていたダークブラウンのカジュアルなジャケットやベージュのチノパンとの相性は抜群だったが、タイなどの小物で色を拾ってフォーマルなダークスーツに合わせるのも面白そうだ。エレガントなケースデザインもそれを後押ししてくれるし、マルーンカラーによって強調されたゴールドのGSロゴ、秒針は手首の上で確かな高級感を放つ。

阪急電車は沿線の人々の生活に根ざしながら、利用者に上質な毎日を送っていると感じてもらえるようなブランディングを行なっているという。ライフスタイルの幅広いシーンで活用できるルックスに加え、高級腕時計としての満足感も与えてくれるSBGH359もまた、腕時計としてそんなスピリットを継承、体現しているように思う。

総じて、本機は企画担当者の深い阪急愛が伝わってくるようなモデルだ。特にダイヤルの仕上げについては、日ごろから阪急電車を利用している人にこそ見て欲しい。僕が気づけなかった共通点や発見が、まだまだ潜んでいるかもしれない。なお、限定モデルは特別な存在感を持たせるために、独特の意匠や工夫が施されることが多い。しかし本作は前述のとおり、明確なコンセプトを持ちながらも(スペックも含めて)デイリーに楽しめるモデルとなっている。グランドセイコーの購入を検討しているが多様なラインナップを前に決めかねている…、という方にも強くおすすめしたい。

なお、阪急うめだ本店から阪急グランドビルを挟んで対面に位置する阪急メンズ大阪にて、2月15日(土)からGrand Seiko POP-UP STOREが開催される。今回紹介した阪急うめだ本店限定モデルのほかブランドの定番モデルが多数展示され、一部ではレアな限定モデルも並ぶ予定だ。白樺(SLGH005)をはじめとした、現在のグランドセイコーを象徴するエボリューション9 コレクションも豊富に揃う貴重な機会だ。ぜひ実際に手に取って、比較、検討して欲しい。

オメガ イン スペース セドナ™ゴールドの最高の特徴をすべて備えたモデルとして楽しんでいる。

皆に愛される“FOIS(ファースト オメガ イン スペース)”のモデルであるセドナ™ゴールドのファースト オメガ イン スペースに対して、常に少し複雑な思いを抱いてきた。この時計は間違いなく豪華で、私のFOISのデラックス版である。しかし私はこれをスピードマスターから大きく逸脱したものだと常々思ってきたし、この逸脱がうれしいとは言い難い。2015年にこの時計が発表されたとき、スピードマスター愛好家のほとんどはこの時計を歓迎し、何人かはその魅力を私に伝えようと懸命に説得したが、いくつかの理由から私はその声に耳を貸すことができなかった。

【AG工場出品】OMEGAオメガ シーマスター ダイバー300M コーアクシャル マスタークロノメーター 007 210.90.42.20.01.001

第一に、1960年代のほとんどすべてのクロノグラフに対するスピードマスターの最高、最大の特徴は、その統一されたブラックダイヤルである。パンダの配色は魅力的であり、セドナ™ゴールドエディションのオパライン文字盤とブラウンのインダイヤルは特にうまくいっているが、オメガは敵の領域に侵入しているような感じもする。セドナ™ゴールドエディションを実際に手にしてわかったことは、20年前に別のモデルがこの前例を作ったということだ。

第二に、おそらくもっと重要なことだが、私はスピードマスターを貴金属にすることは少々ブルジョア的な動きだといつも感じていた。スピードマスターは手ごろな価格のスポーツウォッチだった(私は今もそうだと思う)し、間違いなくデイリーユースの時計だった。1万8000ドル(当時の日本円定価は税込198万円)のセドナ™ゴールドエディションは、オメガの顧客層の一部にとっては変わらず手ごろな価格だろうが、スピードマスターの精神に則っているとは思えない。

しかし、最近この時計と充実した時間を過ごす機会を得たことで、私の論点のいくつかは再考を迫られたと言わざるを得ない。

パンダ文字盤のスピードマスター。これに文句をつける理由があるだろうか?
セドナ™ゴールド FOISの実物を見てすぐに、その豪華な美しさに衝撃を受けた。私の時計とは似ても似つかないが、なんとも美麗だ。数年前から時計の写真を撮っていて気づいたのだが、見栄えのいい時計ほど撮影がしやすい。写真を見てもらえればわかることだろう。目の保養と呼ぶべき時計があるとすれば、この時計のことだ。

スピードマスターの存在意義に目をつむれば、この時計が相当カッコいいことは認めざるを得ない。
これはFOISのエディションのひとつ(オメガは昨年別のパンダ文字盤を発表したが、こちらはブルーとホワイトでステンレススティール製ケース)だが、私が持っているものとは似ても似つかない。親しみを感じるが、視覚、触覚的にまったく新しい体験を提供してくれる。

あまりに見た目が異なるため、このふたつの時計に共通点があることを忘れてしまいがちだ。ケースの大きさ(39.7mm)、90以上のドットが付いた外付けのタキメータースケール、時・分針のアルファ針、インダイヤルのバトン針などオメガはそのすべてをそのまま温存しているし、機械的な面でも目新しいものは何もない。どちらの時計も、ウォルター・シラーの時計に搭載されていたものとは異なるレマニアをベースとしたCal.1861を用いている。このムーブメントはオメガが1968年から使用しているものをベースにしている。
 しかし今回の変更はかなり重要だ。オメガはゴールドを使用することにしたわけだが、それもただのゴールドではなく、レッドゴールドとピンクゴールドの中間のような温かみのある色調を実現するために、ゴールド、銅、パラジウムを組み合わせたユニークで独自のものを選んだ。それを引き立てるためにオメガはブラウンのセラミック製ベゼルを生み出したのだが、これもまた真っ黒なセラミックよりも豊かなニュアンスを生み出している。

 そしてゴールドであるがゆえに、その特徴的な外観に加えて、この時計の最も慣れない特徴のひとつは重さである。予想されるとおり、セドナ™ゴールドバージョンは手首にずっしりと重く感じられる。これはスピードマスターのオーナーの多くが慣れ親しんでいるものではないだろう。スピードマスターの大部分(多くのバリエーションがあるわけだが)はSS製であり、古典的なモデルのいずれかを着用したことがある人なら、大体どのモデルも似たようなつけ心地だ(プレムーンとムーンウォッチのケースを比較すると若干の違いはあるが、一般的に、どの通常サイズのスピードマスターも同じような着用感だ)。

結婚指輪が伝統的なイエローゴールドとオメガ特有のセドナ™ゴールドのいい比較対象になっている。
 オリジナルのFOISと、このゴールドエディションを直接的に比較することはできないが、私がこの現行バージョンに無くて寂しいと思う特徴のひとつは、時を告げる機能とクロノグラフの明確な区別である。私はこのポリッシュ仕上げされたSSとペイントされたバトン針による区別の表現は素晴らしいと思っていた。セドナ™ゴールドバージョンでは、すべての針(と植字されたロゴ)がゴールドである。もちろん、ゴールドの針と白いバトンのコントラストは、あまりに鮮明すぎかもしれない。

日本市場向けのゴールデンパンダ。Photo: Kirill Yuzh and Omega Forums
 オリジナルのFOISとセドナ™ゴールドエディションで興味深いのは、前者がウォルター・シラーのRef.2998の特徴を懸命に再現しようとしているのに対し、後者はその逆方向へ自信を持って一歩を踏み出していることだ。しかし、オメガがゴールドのパンダ文字盤を持つスピードマスターに挑戦するのはこれが初めてではない。日本のコレクターは伝説のゴールデンパンダを覚えている人もいるだろう。1997年に発表された伝統的な白黒パンダダイヤルのYG製ムーンウォッチの40本限定モデルだ。正直なところ、よりソフトなセドナ™ゴールドとブラウンのベゼルおよびインダイヤルを備えた新エディションのほうが、ゴールデンパンダよりもはるかに好みだ。しかしこの時計がスピードマスターの歴史のなかでどのような位置付けにあるかを理解することは重要である。

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