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カテゴリー「スーパーコピー時計」の検索結果は以下のとおりです。

時計愛好家やコレクターにとって、書籍は今でもなくてはならない情報源である。

デジタル化が進んだ現在でもコレクターや研究者たちが手間を惜しまずに参照すべきレベルの資料となるような美しい印刷本を出版し、時にはそれ自体がコレクションに値するような本を出していることは、私のささやかなマニア心をほっと温めてくれる。

 ここ数カ月のあいだに、特集を組んでみんなの読書リストに加えたいと思うようなヴィンテージウォッチに焦点を当てた新しい本をいくつか手に入れた。そのうちの2、3冊は必読書ともいえるもので、『Moonwatch Only』や『Patek Philippe Steel Watches』、あるいは私のお気に入りのオークションカタログ(1989年の『The Art of Patek Philippe』や1996年の『The Magical Art of Cartier』)などに並ぶものである。

『The Dial』ヘルムート・クロット博士(Dr. Helmut Crott)著
the dial english helmut crott
 ヴィンテージウォッチコレクターにとって、『The Dial: The Face of The Wristwatch In The 20th Century』は本棚に欠かせない1冊だ。医学博士から時計コレクターに転身し、ついには腕時計専門の最初のオークショナーのひとりにもなったヘルムート・クロット博士が執筆している。彼の数十年にわたる経験は、392ページに及ぶ参考資料と美しい画像で構成された『The Dial』の執筆に結実した。時計の新作に関する発表は一旦置いておいて、2021年にフランス語で発表された『The Dial』の英語版リリースは、私にとって2023年におけるもっともエキサイティングな発表のひとつだった。

the dial helmut crott
『The Dial』は全3章で構成されている。第1章では、おそらく20世紀のほとんどにおいてもっとも重要かつ成功したダイヤルメーカーであり、1932年にスターン一族がパテック・フィリップを買収するほどの功績を挙げたスターン・フレール(Stern Frères)社の物語が語られる。第2章は、ダイヤルを作るために必要なさまざまな工程を包括的に解説。ギヨシェ彫り、ラッカー仕上げ、インデックスの貼り付けなどがどのように行われるのか疑問に思ったことがある人は、この章で学ぶことができる。最後の章では20世紀に作られた特にコレクターの多い時計のダイヤルについて詳しく解説している。例を挙げるなら、ロレックスのデイトナ、パテックのカラトラバ、オーデマ ピゲのカレンダーなど……、すべてがここに載っている。

 この本を手にするのが楽しみで、出費はまったく気にならなかった。HODINKEE Shopに直行し、自腹を切って購入したのだ(従業員割引が役に立ったことは認める)。

『The Dial』全体を通して、技術、工程、ダイヤルの鮮明な画像が600枚以上掲載されている。ハードカバーの本も素敵だが、これはコーヒーテーブルブックよりずっといい。

『The Dial』をHODINKEE Shopで探す(400ドル、日本円で約6万円)。

『パテック フィリップ・ミュージアムの宝物(原題:Treasures From The Patek Philippe Museum)』ピーター・フリース博士(Dr. Peter Friess)著
treasures from the patek philippe museum friess
 パテック フィリップ・ミュージアムに行くことができず、パテック フィリップ・ミュージアムの全カタログに700ドル(日本円で約10万4000円)も払いたくないという人には、この新しい略式版が手堅い選択肢となるだろう。パテック フィリップが所蔵する225点の時計が、それぞれ100ページずつに及ぶ豊富な図版とともにスリップケースに収められている。第1巻ではミュージアムのアンティークコレクションを取り上げ、パテック フィリップ以外の歴史的に重要な時計や腕時計を紹介している。第2巻ではパテック フィリップが所有する現代までのタイムピースについて特集している。

treasures from the patek philippe museum friess book
 ベンが10年前にパテック フィリップ・ミュージアムを訪れた際にも説明したように、このミュージアムは世界でもっとも見応えのある時計コレクションであり、パテックの自社製品だけにとどまらない(たとえば、Collectabilityによるフリース博士へのインタビューを読めば、ミュージアム所蔵のエナメルコレクションの重要性を理解できるだろう)。第1巻ではホイヘンス(Huygens)、ベルトゥー(Berthoud)、ブレゲ(Breguet)をはじめとする数々のタイムピースを取り上げており、年代を超えた計時の旅にあなたを連れ出してくれる。第2巻では、約200年にわたるパテックの歴史のなかでもっとも重要な複雑機構とデザインについて紹介している。たった50スイスフラン(日本円で約8150円)で、この2冊の冊子を超えるものを探すのは難しい。唯一の問題は、本物を見に出かけたくなってしまうことだ。

『パテック フィリップ・ミュージアムの宝物』は、パテック フィリップから直接購入できるほか、一部の小売店でも購入可能(50スイスフラン、日本円で約8150円)。

ジャガー ルクルト『コレクタブルズ(原題:The Collectibles)』
jaeger-lecoultre the collectibles book
 今年、ジャガー ルクルトは同社のもっとも重要なヴィンテージウォッチを発掘、改修、販売するプログラムであるコレクタブルズ(The Collectibles)を開始した。その後、ブランドはヴィンテージウォッチのカプセルコレクションを2度発表した。本件については、こちらとこちらで紹介している。

jaeger-lecoultre geophysic
 これらの時計とともに、JLCは同名の本も出版した。この本は1925年から1974年までのメーカーの黄金期をカバーし、そのなかでも特に重要な17のタイムピースを記録している。この書籍には、製造番号やキャリバー情報など、コレクターが購入する時計を理解するうえで重要な参考資料や、各モデルの歴史的背景が記載されている。それらを追うなかで、レベルソ、ジオフィジック、フューチャーマティックなどについての知識を深めることもできるだろう。また、本書は美しい図版が557ページにわたって掲載されたハードカバーの大作でもある。

『コレクタブルズ』はミスターポーターを通じてオンラインで購入可能(265ドル、日本円で約4万円)。

『Vintage Military Wristwatches』ザフ・バシャ(Zaf Basha)著
vintage military wristwatches zaf basha
 このリストのほかの本とは異なり、『Vintage Military Watches』はコレクターによるコレクターのための参考書である。600ページにわたり、300点近いミリタリーウォッチが、ダイヤル、ケース、ムーブメントの詳細な写真とともに紹介されている。また、製造番号や生産期間、ダイヤルとキャリバーの詳細情報も記載されている。本格的なヴィンテージのミリタリーウォッチのディーラーやコレクターにとって、本著はこれらの時計とそのコレクター性を理解するために必要不可欠な情報であり、資料である。また、『Vintage Military Wristwatches』の後半にはさまざまな国やその支部の軍規格に関する資料が掲載されている。このような一次資料を入手することは、現在では極めて困難である。資料やスキャンの一部には、読者が目にしているものを解説する詳細なキャプションがあればいいのにと思う箇所もところどころあるが、こうした資料はコレクターにとってそれだけでも貴重なものだ。

『Vintage Military Wristwatches』はバシャのサイト、Classic Watchで販売されている(199ドル、日本円で約3万円)。

『The Cartier Tank Watch』フランコ・コローニ(Franco Cologni)著
cartier tank watch franco cologni
『The Cartier Tank Watch』の新著は私が期待していたような参考書レベルの資料にはほど遠いが、それでも豊富な画像とともにタンクの概要を説明している。コローニは1998年に『カルティエ 伝説の時計 タンク(原題:Cartier The Tank Watch)』を出版しており、本書はその最新版になる。同著にはカルティエが所蔵するタイムピースや、歴史的なアーカイブの画像が多数掲載されている。ご期待の通り、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)、ダイアナ妃(Princess Diana)、モハメド・アリ(Mohammad Ali)、ゲイリー・クーパー(Gary Cooper)など、多くの著名人がタンクを着用している写真も収められている。それらのなかには見たことのある写真もあれば、見たことのない写真もある。

franco cologni cartier tank watch 2023
 カルティエがこのような形でアーカイブにアクセスできるようにしたことから、ブランド側がこの本の内容に関与していることは明らかだ。時にフランコ・コローニのタンクはカルティエ タンクのマーケティング活動のように感じられることもあるが、広告だとしてもモデルの歴史的背景を紹介するような内容であるため、気にする必要はないだろう。とはいえ新型のタンク フランセーズが裏表紙を飾り、巻末にはそのマーケティングキャンペーンが10ページにわたって取り上げられている。私はタンク フランセーズが嫌いなわけではないし、カルティエにとって非常に重要な商業モデルであることに変わりはない。しかし、この点は特に強引な印象を与える。とはいえ、この本の残りの部分を考えれば小さな対価だ。200ページを超えるページのほとんどは、タンクに関する興味深い歴史や事実で埋め尽くされている。もっと詳しく知りたいと思う部分もあったが、それにもまして勉強になった。

ブライトリング アベンジャークロノグラフ、GMT、自動巻きモデル。

ブライトリングは、パイロットからインスピレーションを得たアベンジャーウォッチコレクションをアップデートした。2000年代初頭に誕生したアベンジャーコレクションがこの度、サイズダウンしてシンプルになり、洗練されて帰ってきたのだ。コレクションには、オートマチック 42、GMT 44、B01 クロノグラフ 44で展開し、クロノグラフにはブライトリング社製のCal.01を搭載している。

ブライトリング アベンジャー B01 クロノグラフ
アベンジャー B01 クロノグラフ

新しいコレクションは、航空とのつながりが強いアベンジャーの頑丈な仕様を維持しながらも、ブライトリングのカタログで見られるほかのアップデートと一致している。

ブライトリングのほかの多くのコレクションよりも若いアベンジャーは、ブライトリングを作るすべてのものをよりモダンにマッシュアップしたようなものだ。大きくて大胆で、無骨でもあり、航空に触発されたツールという形容詞がそのまま表れている。

ブライトリング アベンジャー GMT 44
アベンジャー GMT 44

アベンジャーのケース、文字盤、仕様に手を加えたことで、このモデルはより合理的で現代的なものとなった。大きな翼のブライトリングロゴとアラビア数字は消え、シンプルなステンシルの“B”とバトンインデックスに変わった。GMTモデルとクロノグラフモデルのステンレススティールケースは44mm、3針のオートマチックは42mmで展開。いずれも以前のコレクションに比べてサイズダウンしている。さらにラグに面取りを施し、回転ベゼルのタブにポリッシュ仕上げのディテールを施すなど、ケースのディテールと仕上げをさらに向上させている。

ブライトリング アベンジャー オートマチック
アベンジャーコレクションには航空から得たインスピレーションが随所に盛り込まれており、クロノグラフはコレクションのなかで最も重要なモデルであり続けている。アップデートされたアベンジャー B01 クロノグラフ 44のサイズは44mm径×15.2mm厚(ラグからラグまでは53mm)で、自社製Cal.B01は約70時間パワーリザーブを誇る、COSC認定のコラムホイール式垂直クラッチムーブメントとなった。このマニュファクチュールムーブメント、アベンジャークロノグラフの技術的な飛躍を表していると言えよう。誰もが使える大ぶり時計ではないが、それは私たちがブライトリングに期待していることであり、求めていることでもある。そしてカタログのほかのコレクションではサイズダウンされた製品が提供されているため、アベンジャーの本来の目的は維持されている。アベンジャー クロノグラフ 44には、SS製のブレスレットまたはミリタリーレザーストラップと、ブルー、グリーン、ブラック、サンドの4色の文字を用意。ストラップの場合、希望小売価格は103万9500円(税込)となっている。

我々の考え
ブライトリング アベンジャー B01 クロノグラフ
アベンジャー B01 クロノグラフ

ブライトリング アベンジャー B01 クロノグラフ ナイト ミッション
ブライトリング アベンジャー B01 クロノグラフ ナイト ミッション
 SS製クロノグラフと並んで、ブライトリングは同じ仕様ながら、ブラックセラミックのベゼル&ケース、ブラックまたはイエローの文字盤を備えた“ナイト ミッション”モデルも同時に発表した(リューズとプッシャーはチタン製!)。そしてナイト ミッションクロノグラフの希望小売価格は、123万7500円(税込)~だ。

ブライトリング アベンジャー GMT 44
44mm径×12mm厚(ラグからラグまでは53mm)サイズのアベンジャー GMT 44は、ETAベースのブライトリングCal.32を搭載し、COSC認定、約42時間パワーリザーブ、独立して調整可能な24時間針(調整可能なのは時針ではなく24時間針なので、同僚のステイシー用語では“コーラーGMT”)を備える。アベンジャー GMTには両方向回転ベゼルがあり、ブライトリングの特徴である“ライダータブ”が方位によってひと目でわかるように付いている。ブラックまたはブルーの文字盤、ストラップまたはブレスレットが付属し、価格はストラップ付きで69万8500円(税込)だ。

ブライトリング アベンジャー オートマチック
最後に、アベンジャー オートマチック 42は、ブライトリングのCOSC認定Cal.17(ETA Cal.2824-2ベース)を搭載したコレクションの新しい3針&日付モデルだ。サイズは42mm径×12.1mm厚(ラグからラグまでは51mm)で、アベンジャーシリーズの複雑な構成モデルよりかはサイズダウンされているが、GMTよりかは少し厚い。逆回転防止ベゼルを備え、グリーン、ブラック、またはブルーの文字盤から選べる。ブレスレット、ストラップはそれぞれ64万3500円、59万9500円(ともに税込)から。

アベンジャーの新モデルは、時代を感じさせていたコレクションを洗練させるという、必要なアップデートを加えた。特にクロノグラフがブライトリング製のB01クロノグラフキャリバーを使用していることを考えると、価格は妥当なところだろう。

ブライトリング アベンジャー B01 クロノグラフ 44。44mm径×15.2mm厚(ラグからラグまでは53mm)、300m防水。COSC認定の自動巻きコラムホイール式垂直クラッチクロノグラフムーブメント、ブライトリングCal.01搭載。振動数は2万8800振動/時、約70時間パワーリザーブ。ブラック、ブルー、グリーン、サンド文字盤の4種。SS製ブレスレットまたはミリタリーレザーストラップ。ストラップ付きは103万9500円、ブレスレット付きは110万円。アベンジャー B01 クロノグラフ 44 ナイト ミッションも同じ仕様だが、ケースはブラックセラミック、文字盤はブラック、イエローで展開。ブラックが126万5000円、イエローが123万7500円(すべて税込)。

ブライトリング アベンジャー オートマチック GMT 44。44mm径×12mm厚(ラグからラグまでは53mm)、300m防水。COSC認定の自動巻きCal.32を搭載。振動数は2万8800振動/時、約42時間パワーリザーブ。両方向回転式24時間ベゼル。ブラック、ブルー文字盤の2種。ストラップ付きは69万8500円、ブレスレット付きは73万7000円(ともに税込)。

ブライトリング アベンジャー オートマチック 42。42mm径×12.1mm厚(ラグからラグまでは51mm)、300m防水。COSC認定の自動巻きCal.17を搭載。振動数は2万8800振動/時、約38時間パワーリザーブ。逆回転防止ベゼル。ブラック、ブルー、グリーン文字盤の3種。ストラップ付きは59万9500円、ブレスレット付きは64万3500円(ともに税込)。

関連商品:https://www.yokowatch.com/Breitling-Watch.html

ラドー、カーヴィーな80年代の名作であるアナトムの40周年記念モデルを発表

“マスター・オブ・マテリアル”の異名を持つラドーが、マイアミで80年代に活躍していた腕時計の復活を発表した。その名もアナトムである。

Anatom
 2023年に蘇ったカーブを描くレクタンギュラーウォッチは、1983年に発表された初代アナトムにオマージュを捧げながらも、現代のラドーのデザインコードを用いることでまったく新しいバリエーションとして生み出された。私はこの発表のためにマイアミを訪れ、ブランドのCEOであるエイドリアン・ボシャール(エイドリアン・ボシャール)と少し話をしたのち、アナトムの遺産についてもう少し深く掘り下げる機会を得た。前日の夜に行われた小さなイベントで、彼は80年代の当時のアナトムを取り出し、間もなく発表される新作について簡単に語った。ブレスレットにツートンカラーのを乗せた、とてもクールで(文句なく)小さな時計だ。

 アナトムがいかに特別なモデルであったかは(ヴィンテージウォッチを見れば一目瞭然だが)、カーブしたケースと凸型のサファイアクリスタルが雄弁に語ってくれる。そして、ケースからインダストリアルなブレスレットへとシームレスにつながるデザイン。パッケージ全体がまさにラドーを象徴しており、モダンな時計製造に向けられたブランドの情熱が表現されている。

Anatom
 しかし、1983年に発表されたアナトムでさえも、同ブランドが築き上げてきたレクタンギュラーウォッチの伝統を受け継ぐモデルである。1960年代のマンハッタンから80年代のダイヤスター エグゼクティブまで、アナトムの誕生には20年以上の準備期間のようなものがあった。アナトムの発売からも、ラドーはシントラ、セラミカ、インテグラル、そして2020年のトゥルースクエアに至るまで、長年にわたってこのケースシェイプに深い愛情を注ぎ続けてきた。

 さて、2020年はブランドにとって重要な意味を持つ。というのも、ボシャールが(サーチナでの輝かしい在任期間を経て)CEOに就任した年だからだ。先日、ボシャールはラドーのプロダクトチームとの初めてのミーティングについて少し話をしてくれた。その時に彼は、ラドーが将来リリースするモデルのひとつとしてアナトムに照準を定めたのだという。かつてのアナトムはスティール製だったが、このモデルの基本方針は、ブランドのモダンなアイデンティティを尊重しつつも、素材にセラミックを採用するというものであった。このシェイプとフォルムを持つ時計をセラミックで作るのは、かなり困難であったことは想像に難くない。

Anatom
 そして今日、初代ダイヤスター アナトムの発表から40年を記念して、セラミック製の本モデルが発表された。この時計は、素材に熟達したブランドが生み出した最先端の進化であり、これまでにない新たな形で過去へのオマージュを表現している。過去との直接的なつながりにこだわるのではなく、バックミラーを覗いてウインクしながら、正真正銘のヘリテージを備えた真のモダンウォッチを創造することに重きを置いているのである。

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 オリジナルのダイヤスター アナトムから、現代的なトレンドに合わせて変更された点として、まずケースサイズが幅28mmから32.5mmに拡大されたことが挙げられる。ひと回り大きくなったものの、まだまだ控えめなサイズだ。ベゼルはマットブラックのセラミックだが、全体的な設計はシリンダー型のサファイアクリスタルと同じ曲線をとっている。

 オリジナルモデルではダイヤルに水平方向のストライプが施され、ブレスレットのラインと調和していた。今回の新作では、セラミック製ではなくラバーのストラップが採用されている(もっとも、このモデル用のセラミック製ブレスレットも製作中であることは間違いない)。ダイヤルは水平方向にサテン仕上げが施されており、ブルー、コニャック、グリーンの3色のスモーク加工が施されている。そして12時位置には、ラドーのシグネチャーであるアンカーが配されている(オリジナルには見られなかったものだ)。

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 ケースの全体的な構成として、ベゼルトップは前述のマットセラミック、ミッドケースはブラックPVDスティール製となっており、そしてスティールのスケルトンケースバックからはアナトムが1983年に搭載していたクオーツキャリバーとは異なる自動巻きムーブメントを見ることができる。このムーブメントは6時位置にデイト窓を備え、72時間のパワーリザーブを誇るラドーの自動巻きキャリバーR766である。

 アナトムのローンチ時に発表された3色のスタンダードカラーに加え、ラドーはブラックラッカー仕上げのポリッシュダイヤルと、11個のバゲットダイヤモンドからなるインデックス、そしてブラックダイヤルを背景にロジウムカラーのムービングアンカーモチーフを配した40本の特別限定モデルであるJubilé (日本での展開は未定)も発表する。

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 さて、この発表について私はどう思っているだろうか? デザインと美観という点では私の好みとちょっと違うかもしれないが、これはこれで素晴らしい。1983年のバージョンを目にし、デザインの歴史を理解したことで、40周年記念にフルモダンの外観を採用したブランドの確固たる意志に感銘を受けた。正直なところ、ラドーについて考えるときに頭に浮かぶのは次の3つの要素だ。キャプテン クック、スクエア、そしてセラミック。この3つのうちふたつは、今作でもカバーされている。

 私は昔から湾曲したレクタンギュラーケースが好きだし、この新しいアナトムは1980年代のオリジナルに必要以上に引っ張られることなく、21世紀らしいモダンなデザインを完璧に表現していると思う。この時計のオールメタル仕様を製作するのは簡単だっただろうが、今日の時計市場にはすでに多くの類似品が出回っている。

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 ラバーストラップがマットなセラミックケースとどのようにマッチするのか、腕につけて確かめてみるのが楽しみだ。着用感、視認性、そして総合的な感想については、近いうちにHands-Onで報告したいと思う。以上、マイアミより。

基本情報
ブランド: ラドー(Rado)
モデル名: アナトム(Anatom)
型番: R10202319(グリーン)、R10202209(ブルー)、R10202309(コニャック)

直径: 32.5mm(縦46.3mm、厚さ11.3mm)
ケース素材: マットブラックのハイテクセラミック製ベゼル、ブラックPVD加工を施したサンドブラスト仕上げのステンレススティール製ミドルパーツ、マットブラックのハイテクセラミック製リューズ、ステンレススティール製ケースバック、サファイアクリスタルのシースルーバック
文字盤色: ブラックにグリーン、ブルー、コニャックのグラデーション
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ラバーストラップ

Anatom
ムーブメント情報
キャリバー: ラドー キャリバーR766
機能: 時・分・秒表示、デイト表示
パワーリザーブ: 72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
石数: 21

Anatom
価格 & 発売時期
価格: 52万9100円(税込)
発売時期: HODINKEE Shopにて購入可能(日本では2024年上旬に発売)
限定: Jubiléのみ40本限定(Jubiléは日本での発売は未定)

ヴァシュロン・コンスタンタンはレ・キャビノティエコレクションから大作“ラ・ミュージック・デュ・タン(La Musique Du Temps)”を発表した。

コレクターやプレス関係者が集まり、当然ながらチャイムの複雑機構を多用した時計のコレクションを目にすることになり、同時にこの分野で最高のアーティストたちによる最上級のエナメル細工やケースのエングレービングも堪能することができた。グラン・フーエナメルのミニッツリピーター・ウルトラシンのような作品の数々は、今でも私のお気に入りのモダンなチャイムウォッチであり続けている。まあ、あくまでも机上の空論だが。私は実物を見たことがない。見たことのある人はほとんどいない。これらの時計は基本的に事前に販売され、プレスに公開される前に顧客に公開されてきた。

ヴァシュロン・コンスタンタンのルーブル美術館コレクションよりピーテル・パウル・ルーベンスへのオマージュ。

それこそが、レ・キャビノティエをこれほどまでに際立たせている理由のひとつなのだ。“世界三大ブランド(Holy Trinity)”と呼ばれる時計メゾンは、いずれもユニークなピースを製作したりオーダーメイドを受けたりすることがあるが、ヴァシュロンほどアクセスしやすいメゾンはない。もちろん、それは経済的な観点から言っているのではない。これらの時計はすべて“要問い合わせ”だ(信じて欲しいが、私たちは何度も問い合わせたのだから)。しかし、レ・キャビノティエとして製作された作品の多くは、今年初めに私が撮影したピーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens)へのオマージュのように公開されている。そしてオーデマ ピゲやパテック フィリップとは異なり、レ・キャビノティエの時計を購入したりオーダーするためには、ブランドの大口顧客であったり、CEOと親友であったりする必要はない。ヴァシュロン・コンスタンタンのルイ・フェルラ(Louis Ferla)CEOに尋ねてみたところ、誰でもレ・キャビノティエの門を叩き、時計をオーダーすることができるとオフレコで答えてくれた。もちろんヴァシュロン・コンスタンタンは、クライアントが自分のアイデアを膨らませることができるように優しく指導しながら、何を作るかを調整する。しかし、もしあなたが特別なユニークピースをお望みなら、ヴァシュロンはいつでも相談に乗ってくれるだろう。

“ラ・ミュージック・デュ・タン” レ・キャビノティエ・ミニッツリピーター・ウルトラシン 2019年製。

レ・キャビノティエは、ヴァシュロン・コンスタンタンの最高の時計職人と専属の職人の手によるコレクションで、これまでカスタムオーダーに重点を置いてきた。しかし一般に発売されたこれらの時計は、顧客の需要と、言葉は悪いが、誰も持っていない時計を手に入れるための待ち時間の長さに対する焦りから生まれたものである。一部のコレクターにとっては、待つことで自分の意見が反映された時計が手に入るなら、そんなことはどうでもいいことなのだ。以下は私の好きなJ.G.ウェントワースの広告の引用だ。「それは私のお金だ、今すぐ欲しい(It's my money, and I want it now)」

「顧客に対して、“できますよ。でも3年、4年、いや5年かかります”と言うと、それは当然必要な時間なのですが、顧客基盤のかなりの部分を失うことになります。それでビジネスモデルを少し転換して、“ユニークで素晴らしい作品を年に1回コレクションする”と言うことにしたのです」とフェルラ氏は語った。

レ・キャビノティエの生産量の3分の2(わずか40~50本)は、このようなテーマに沿った作品と、年間を通して少しずつ発表されるその他の作品が占めている。そうすると、コミッション枠は13〜16枠しか残らない。残りは2022年から続く以下のような作品の製作にあてられている。

これらの時計は、ときに仰々しく過密なダイヤル装飾を伴うものの、非常に素晴らしいものだ。例えば、2022年に発表されたトリビュート・トゥ・バッカス(Tribute to Bacchus)は、(とりわけ)ワイン、豊穣、祝祭、儀式の狂乱を司る神に捧げる、時計に期待される華麗な装飾や複雑機構、享楽的な厚みをすべて備えていた。フィリップ・スターン(Philippe Stern)の顔をダイヤルに配したパテックの選択はさておき、ヴァシュロンはキャリバーとダイヤルのデザインにおいて特にバランスを重視しているようである。しかし、Cal.2755 GC16には16の複雑機構が搭載されているため、パテックのグランドマスター・チャイムと同じように、ヴァシュロンの時計製造の壮大さが少々大げさに感じられることがあるかもしれない。

ヴァシュロン最新のレ・キャビノティエ コレクション、レシ・ドゥ・ヴォヤージュ(または旅の物語)には、そのような要素は少ない。レ・キャビノティエにとってサイズという問題は依然としてあるが(このプログラム史上、38mm径より小さいサイズの時計は1本も作られていない)、ピーテル・パウル・ルーベンスへのオマージュが残したものを引き継いでおり、かさばる複雑機構よりも職人技術に重点が置かれている。

これらの新作は旅の素晴らしさを想起させながら、手首にその感動をもたらすことを目的としているが、ユニークピースであることに変わりはない。すなわち、単なるサンプルではなく、顧客の手元に届けられるものだ。そのため、リストショットやリストロールは撮れないし、手袋なしでの取り扱いはできない。私たちはまだすべての作品を見ることができておらず、それは以下の写真に写っていないいくつかの作品が今日ソーシャルメディア上で公開されていることからも明らかだ。しかし、裏を返せば、これらの時計がすでに売られてしまう前に見ることができるということでもある(この記事をここまで読むころには事情も変わっているかもしれないが)。それではさっそく旅に出よう。

レ・キャビノティエ・ミニッツリピーター・トゥールビヨン-アラベスク様式への賛辞-とミニッツリピーター・トゥールビヨン-アールデコ様式への賛辞-

ヴァシュロン・コンスタンタン レ・キャビノティエ・ミニッツリピーター・トゥールビヨン-アールデコ様式への賛辞”

私がこのプレスリリースを入手したときから、これらの時計がショーの主役であることは明らかだった。ヴァシュロンは手巻き式のトゥールビヨン・ミニッツリピーター、Cal.2755 TMRを大きく異なるふたつの方向へと進化させたのだ。そのデザインは、私の現在の本拠地であるニューヨークと、今回のお披露目の場所となったエミレーツを結ぶもので、数々のハイエンドで繊細な工芸技術を披露している。

左は“アラベスク様式への賛辞”であり、アーティストたちが何世紀にもわたって歴史的なイスラム美術から着想を得てきた、アブダビのシェイク・ザイード・グランド・モスクにあるイスラームの美術作品や唐草模様、小花模様からインスピレーションを得たものである。ヴァシュロンと中東とのつながりは古く、1817年にはオスマン帝国の富豪たちに時計を供給していた。このダイヤルは、部屋を仕切ったり、建物の外壁に見られたりするマシュラビーヤのスクリーンをモチーフにしている。透かし彫りと彫金が施されたホワイトゴールドの“格子細工の装飾”が、ラインエングレービング技法による彫りの深いマットな質感の黒の背景とコントラストをなしているのがわかるだろう。ホワイトゴールドのプレートは薄く、細かいディテールが要求されるため、ダイヤルの完成だけでも1カ月を要したという。

細密画のような職人技を見てこれでもまだもの足りないというなら、“アールデコ様式への賛辞”のダイヤルはどうだろう。これを間近で見て、私は圧倒された。ヴァシュロンが寄木細工と彫金七宝を組み合わせたダイヤルを製作したのは、これが初めてのことだ。そのデザインは、尖塔のデザインからエレベーターのドアに施された木製の象眼細工に至るまで、紛れもなくクライスラー・ビルにインスパイアされている。ピンクゴールドのケースにはペアウッドとチューリップウッドの対照的な模様があしらわれている。そのダイヤルには“パール”のミニッツトラックと11個のファセットダイヤモンドのアワーマーカーが配され、6時位置に近いものがもっとも長く、12時位置に近づくにつれて徐々に短くなっている。これは、トゥールビヨンが見えるために下部が重たくなりがちな時計のデザインのバランスを保つものだ。

“アラベスク様式への賛辞”のホワイトゴールドケースの側面には有機的なインタリオ彫刻が施されているが、その他の大部分は幾何学模様で覆われている。エングレービング作業には3カ月を要し、最高で10分の1mmの刻みが施されている。ピンクゴールドの“アールデコ様式への賛辞”のスタイルは全体的に極めて幾何学的で、驚くほど複雑なヘリンボーンモチーフが施されており、時計を(優しく)手にしたときに光を反射する。それぞれの時計は、バックルにまでエングレービングが施されている。

ケースやダイヤルに多くの職人技が注ぎ込まれているため、内部のキャリバーはほとんど後付けのようにも見えるが、それ自体は実に見事なものだ。Cal.2755 TMRはとても美しいミニッツリピーターの音を奏で、直径33.9mmに厚さ6.1mmと比較的小さい。裏返してケースバックからムーブメントを見ると、ヴァシュロンがこの時計を直径44mmに厚さ13.5mmと縦横に大きくサイズアップしていることがわかる。レ・キャビノティエの時計は、職人の芸術性を表現するためのキャンバスである、というのが私の主張だ。私はヴァシュロンに対して、ミニマリズムとより小さなサイズへの挑戦が、さらなる芸術性を示すことができると提案をしたい。私はおしゃべり好きだ。写真を選べないことが多いので、結局、ドバイ・ウオッチ・ウィークのフォトレポートでは200枚以上の写真を掲載することになった。しかし、過ぎたるはなお及ばざるが如しということで、私は実機を触っているあいだずっと、ヴァシュロンはこのことを肝に銘じるべきだと考えずにはいられなかった。ヴァシュロン・コンスタンタン レ・キャビノティエ・ミニッツリピーター・トゥールビヨン-アラベスク様式への賛辞。

レ・キャビノティエ・グリザイユ・ハイジュエリー-ドラゴン
この時計は、複雑な時計製造から少し遠ざかるための口直しのようなものなので、これ以降Hands-Onレビューを手短にする口実にさせてもらおう。レ・キャビノティエ・グリザイユ・ハイジュエリー-ドラゴン-は、ヴァシュロンの超薄型キャリバー1120を採用し、直径40mm、厚さ8.9mmのホワイトゴールド製ケースに7.1カラットのバゲットカットダイヤモンドをあしらったモデルである。

ジェムセッティングを施した時計の芸術性を評価するようになった(そしてたまには愛せるようになった)私だが、このダイヤルを完成させるのにどれほどの才能が要求されるかは想像に及ばない。ヴァシュロンがジェムセッティングとグリザイユ・エナメルを組み合わせたのはこれが初めてで、ヴァシュロンによる写真ではダイヤルはグリーンの趣が強かったが、実際に目にするとよりブルーっぽく見えた。ともあれ、ナメル細工の色彩の豊かさとコントラストは傑出しており、伝統的なグリザイユ・エナメル細工よりも鮮やかであった。

次はトゥールビヨンに話を戻そう。レ・キャビノティエ マルタ・トゥールビヨン-オスマン様式への賛辞-だ。その名が物語るように、トノー型ムーブメント2790 SQが搭載された同じくトノー型のこの18Kピンクゴールド製ケースは、特徴的な独自のスタイルでパリの活性化と刷新を指揮したバロン・ハウスマン(Baron Hausmann)からインスピレーションを得ている。

ケースにはオスマンスタイルのファサードを想起させるシャンルベ装飾などさまざまな技法が施され、 ムーブメントのモチーフはエッフェル塔の金属構造を想起させる。ケースサイズは縦41.5mmに横38mm、厚さ12.7mmとなっている。

レ・キャビノティエ・アーミラリ・トゥールビヨン-アールデコ様式への賛辞-
この時計のムーブメントに見覚えがあるとしたら、あなたは鋭い観察眼を持っている。このアーミラリー・トゥールビヨンは瞬時に切り替わるバイレトログラード式の時・分表示を備え、2軸のトゥールビヨン・レギュレーターを搭載したムーブメント1990を搭載しており、世界で最も複雑な時計と称される巨大なヴァシュロン57620の技術的功績を受け継いでいる。さらに最近では、このムーブメントはロールスロイスのために製作されたカスタムウォッチに搭載されている。

イエローゴールドのケースには精巧なエングレービングが施され、ダイヤルにはアールデコに影響を受けた素晴らしいデザインが施されているが、その視認性はロールスロイスのそれと比べるとかなり低い。また、直径45mm、厚さ20.1mmというこの大ぶりな時計は、ダークなダイヤルにダークな針が配され、比較的判読しにくい印象を受けた。私はヴァシュロンが好きだが、この時計は私にとってはもの足りなく思えた。このブランドに期待される洗練されたものよりも、もっと派手であまり技術的でない会社から発売される大型の時計により近いと感じたからだ。もっとも興味深かったのは、下に見えるトゥールビヨンと球形ヒゲゼンマイのための覗き窓だった。技術的な面ではおもしろい時計づくりだが、残念ながら少し実用的ではないようだ。

レ・キャビノティエ-メモラブル・プレイセズ-
Les Cabinotiers – Memorable places
レ・キャビノティエ-メモラブル・プレイセズ-

上記の時計の対極に位置し、ブランドのエングレーバーが新たな手法を用いて、ミニマリスト(あるいは “ミナチュリスト minaturist”とでも言うべきか)のそれとはまったく異なる形で思い出深い土地に捧げられた4つの作品がある。これらの時計は前に紹介したドラゴンウォッチと同じCal.1120を搭載し、直径40mmに厚さ9.1mmというやや厚めのケース(ホワイトゴールドまたはピンクゴールド製)を備えているが、その厚みを生かしてジュネーブから極東までの風景を描いた素晴らしいエングレービングが施されている。

3色のゴールドダイヤルに彫り込まれた小さな人物や犬、象、そして漢字といったディテールを堪能して欲しい。それぞれのダイヤルは、イエローゴールド、ホワイトゴールド、ピンクゴールドから切り出された複数のプレートからなり、絵画に描かれたさまざまな色の要素を構成している。プレートの厚さは0.4~0.8mmで、アーティストが彫る際の彫りの深さは10分の1mmから10分の2mmを超えることはない。そして、200時間以上という長い時間をかけて1枚のダイヤルが作られることになる。

顧客は4つの風景から時計を選ぶことができる。1875年にメゾンが近くのケ・デ・ムーラン(Quai des Moulins)に移転するまでの約30年間、ヴァシュロン・コンスタンタンとその工房があった “トゥール・ド・リル(La Tour de l’Île)”には、先ほど紹介した愛らしい犬が描かれている。“アンコール・トムの入口門(The Entrance Gate to Angkor Thom)”は、ルイ・ドラポルテ(Louis Delaporte、1842-1925)が描いた南門からインスピレーションを得ている。PG、 YG、WGのプレートに9つのエングレービングとダマスク装飾が施され、すべてのダイヤルのなかでもっとも奥行きがあるデザインとなっている。そして“オールド・サマー・パレス(Old Summer Palace)”は1873年の彫刻で描かれた清朝王宮の庭園文化、その建築、彫塑、装飾、園芸への頌歌だ。エングレービングとダマスク装飾を施したわずか8枚のプレートで、ほぼ同様の奥行きを表現している。最後に、“孔子廟とインペリアル・カレッジ・ミュージアムの入り口門(Entrance gate to Confucius Temple and Imperial College Museum)”の図柄は、1864年の旅行記に掲載されたエミール・テロン(Emile Thérond、1821-1883)のデッサンによる。

今回のヴァシュロンの“レシ・ドゥ・ヴォヤージュ”のテーマのなかでもっともわかりやすく、連想しやすいのがこれらかもしれない。ヴァシュロン・コンスタンタンからはあまり深読みしないで欲しいと言われたものの、中国をテーマにしたふたつのモデルが登場したことは、現代の時計界における中国市場のパワーを物語っているように思える。

これらは素晴らしい芸術作品だが、どのテーマにも個人的なつながりはなく、私の心は最初に多くの 時間を共にしたトゥールビヨン・ミニッツリピーターに回帰し続けていた。そのどちらでも好きなパッケージの時計を選ぶことができ、視覚的に楽しませてくれるだけでなくインスピレーションとデザインを感じ取ることができる。パンデミック中は家にいる時間が長かったため、旅行することが当たり前とは思っていないが、レ・キャビノティエのアラベスクやアールデコのリピーターが呼び起こす自分だけの物語やつながりを創造し、自宅でイマジネーションを膨らませることだって今は同じくらいに幸せだ。まあもっとも、ヴァシュロンには何の損失もない。これらの時計は私の手には負えない価格帯であることに加え、おそらくすでに新しい住処へと向かっていることだろう。

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タグ・ホイヤーの新型カレラ、通称“グラスボックス”は、間違いなく同社のターニングポイントとなる時計だ。

この39mmのカレラ グラスボックスのどこに注目すべきなのか、3つのポイントにまとめてみた。また、現在タグ・ホイヤーを率いている、CEOのフレデリック・アルノー氏から直接伺った話を含め、僕なりに本作がいかに特別な時計なのかを考察してみたいと思う。

 

1 数字以上に優れたサイジング
 近年のカレラはたびたび39mmというサイズでリリースされている。小型化のトレンドを受けたものではあるものの、このグラスボックスからケースがさらに工夫してシェイプされ、フィッティングが明らかに進化しているのだ。カレラ60周年アニバーサリーモデルなどで用いられた39mmケースはストレートに近いラグ形状で、短くて角度がついているが“腕に沿う”というほどではなかった。それが本作では、ラグをわずかにカーブさせたことにより着用者を選ばずつけやすくなった。さらには、ラグトゥラグのサイズにいたっては、カレラ60周年アニバーサリーモデルが47.7mmであるのに対し、46mmまで詰められた。これは実質的なサイズダウンであり、クロノグラフウォッチといえど、袖口に収まるようなスタイルを目指したのだと思われる。


2 オリジナルへのオマージュも感じるデザイン
 デザインにおいてはなんといっても大型の風防、通称“グラスボックス”を採用したことが最大の特徴だ。これまでのクラシカルデザインを用いたカレラも、大型のドーム風防を合わせることが慣例だったが本作の風防は特に際立っている。ケースの際まで覆うように配された“グラスボックス”は、サイドから見たときに煌めきを増すだけでなく、ケースをより薄く見せるような視覚効果ももたらす。この形状に合わせてタキメーターが印字されたフランジ部分は、別体パーツを用いて大きく隆起しミニマルな文字盤に視認性と個性を与えている。

 なお、非常に珍しいのが、文字盤の色によってダイヤルレイアウトが少し変化するのだが、それもまた画期的だ。ベースとなる黒と青文字盤で表情が変わるのだ。6時位置にデイト表示があり2カウンターのようなデザインの青に対し、黒文字盤ではデイト表示が12時位置(通称DATO:ダートだ)に変わり、いわゆる3つ目デザインとなる。同社内でヘリテージカレラの研究も進んでいるからこそ、過去の特徴的な意匠が盛り込まれたのだ。


3 地道な進化を遂げたムーブメント
 最後に、ムーブメントについても触れておくのだが、これはあくまで序章に過ぎないのかもしれない。HODINKEE読者ならば、現在タグ・ホイヤーでムーブメント開発の指揮を執る人物がキャロル・カザピ氏であることはご存知のことと思うが、彼女が監修したムーブメントに本作から切り替わっている。ただ、このCal.TH20-00は、厳密にはこれまでCal.ホイヤー02(そして古くはCH80)と名乗っていたムーブメントの改良版だ。パートごとに調整が入り、巻き上げ方式が両方向になったり一部の歯形が変わったりしているものの、基本的には同じものだ(日本の時計師にも話を聞いたが、やはり大きな変化はないそうだ)。ただ、カザピ氏の設計思想としては、非常に強固かつパワフルなベースムーブメントを開発したうえで、コンプリケーションまで展開するという特徴がある。その意味では、就任間もない現時点はまだ地ならしのような段階なのかもしれない。

 改良されたCal.TH20-00の行く末がカレラなのかモナコなのか…。タグ・ホイヤーのアイコンモデルで驚くべきコンプリケーションを見ることができるのは、おそらくそう遠い未来ではないはずだ。

 さて、本レビューの詳細はぜひ改めて動画で確認いただきたいものの、最後に強調しておきたいことがある。それは、タグ・ホイヤーにとってシグネチャーであるカレラがこれほどまでに大変革を遂げられたのは、CEOであるフレデリック・アルノー氏の手腕によるところが大きい。今回のアップデートは、時計好きの人にとってはガラリと変わった大きなものに映ると思うが、デザインとしてはよりミニマル方向へと舵が切られたものだ。いわば、これからの時代のベーシックとなるようなもので、短期的には大きく売上に貢献するようなものではないだろう。フレデリック氏がアルノー家の人間であることが作用しているのは間違いないが、それ以上に彼の覚悟の結果がこのグラスボックスに表れていると思う。

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